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旅に出ると忘れてしまったことを思い出させるものに出会うことがある。
意外になにげないものが心の底のほうからぶるっと揺すり、記憶の断片を蘇らせる。
そして、その断片たちをつなぎ合わせようと
古ぼけた地図を片手に消えゆく街を彷徨いはじめる。
日常の風景が夕日に照らされ、まばゆく見える。
日が沈んだあともしばらく残る余韻がこの身をとどませる。
美しい風景をながめるたびに思うことがある。
この自然が持つ美しさは、汚されてしまったこの世に残されたものならば、
汚される前の自然はどんなにか美しかっただろう。
見るものすべてが美しく、いつもいつも感動していたのだろうか。
それとも美しいものとの出会いが少なくなってから
感動というものがうまれてきたのだろうか。
いま、この木々の緑がつくる深き世界に身を沈めてみる。
重なりあった枝葉の隙間から真直ぐに差し込む光がわたしの頬を照らす。
空から降りてくるのは太陽の光だけではない。
本当はうっとうしいだけの雨も、大地をうるおし泉となり川となって、
わたしたちが生きるために必要な水をもたらすために降り注いでいるのだ。
深く目を閉じ、静寂の中にもう一度この身をゆだねる。
いまこうしていると生かされて生きているのだなあと思う。
あらたなものが降りてきてこの体内へと注がれている。
そしてわたしはしずかに、ゆっくりと唄いだす。
この大地とそこから生まれた生命たちとひとつになるために。
喜ぶとき泣くかわりに唄いましょうね。そして踊りましょうね。
怒るとき泣くかわりに唄いましょうね。そして踊りましょうね。
哀しいとき泣くかわりに唄いましょうね。そして踊りましょうね。
楽しいとき泣くかわりに唄いましょうね。そして踊りましょうね。
それがわたしたちの生きてる証だから。
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